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家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

作り手との触れ合い

施工:塗装 道具・設備

 大盤振る舞いも辞さず、と構えていた。しかし、高額な刷毛は漆器等に使われるような代物。お父さんの見立てでは、本施工ではさほど高級な刷毛は要せず。そもそも匠の技の刷毛を使いこなす自信も無いけども。

 主だった漆刷毛は人毛が使われる。ちょいと前まではこの髪を扱う業者がおられたそうだが、現在では廃業。この事で刷毛用人毛の流通は無くなり、まだ入手可能なのは支那人女性物。現代日本人女性物も独自にか入手されるルートを得られたそうで、これによる刷毛作りにも取り組まれている。しかし、最高級の日本人髪毛の「古かもじ」と呼ばれるものはこれらとは質が違うそうだが、これは在庫限りだそうだ。

 

 今の所使い道は全く無いものの、この最高級刷毛も真剣に検討してみた。この刷毛師の方への投票行動の意味合いと、後世への贈呈品としてだ。我が子孫が使わなくても構わない。博物館等に寄贈すれば良い。

 そんな事も考えていたが、どうも漆刷毛にも寿命があるとの事。ご当主の先々代だったかの手掛けられた未使用品の刷毛はボロボロだそうだ。人毛は百年単位だと朽ちるようで。ホラー映画等の影響なのか、毛って何となく永く残る物だと思っていたが意外。刷毛としての腰や強度が残るか否かの問題なんだろうか。

 で結局、三種の刷毛で二万円に満たないぽっちの投票で終わる。

 

 こういったお父さんの勝手な想いは伏せてメールを送る。しかし、お父さんが溢れ抱く敬意が滲み伝わったようで、ご当主ご本人からえらく恐縮して頂いた旨のご返信を頂いた。こちらこそ恐縮。この事もあってなのか注文した際には「直ぐ使い」仕様にするご提案を頂いた。

 鉋や鑿や鏝と同じく、漆刷毛も直ぐに使う事が出来ない。仕込まないといけないのだ。具体的には、毛は麦漆にて板状に固められているのでこれを叩き解す必要がある。これがなかなか難儀らしい。その上で、毛先を砲弾状に整えなければいけないとの事。この手間と言うか腕前を要する事が、漆刷毛の敷居を高くしている面があるらしい。この事に対応されてか「直ぐ使い」の仕込みをしてもらえる。

 

 色々したがるお父さんは、これら承知の上で自分でやってみようと思っていた。漆刷毛の特徴の一つと思えるのが鉛筆のように使える所。刷毛は毛先が摩耗する。現にチリ掃除で使っている自作の棕櫚刷毛も、チリに応じた形状にしっかり摩耗している。漆刷毛の場合、周囲の木部を削って新たな毛を出して使っていくのだ。その際には、やはり毛板を叩き解す等の手間が必要になる。これを踏まえての事でもある。

 しかし、ご当主曰く、注文した巾広の三寸物は塗師職でも大変だそう。初めての漆塗りだとご存知の上でのご心配。

 

 考えを翻してここは甘えさせて頂いた。本職でも大変な事とは知らずで、一度完成品をお手本として把握しておこうと。さらに、キッチン天板塗装時期が間近。ここで躓くと、工程的にも精神的にも痛がるだろう自分の姿がありありと思い浮かびお願いした。

 一般的ショッピングサイトでクリック注文でならば、このようなやり取りは皆無。ご当主の接客方針を早速体感。単独での施主施工をやっているが、思いもよらぬ所で他者との触れ合いを感じた出来事。

 

 それから数日、来客を待つ心持になっていた刷毛が届く。これか、これが伝統技法による漆刷毛というものか。手にすると高揚感と緊張感が沸き上がった。写真撮影無精のお父さんでも写真撮りまくり。

 これで二万円未満かぁ。これらはご当主ではなく後継者の方が製作じゃなかろうか。修行中の方による品、だからこの価格。そうじゃないと割りが合わないような気がする。いや、それでも割に合っているのか甚だ疑問。

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 毛厚がある方は摺漆用だ。漆をたっぷり吸わせる為。それに、摺り摺りする際には毛に腰がないといけないだろう、とも考えた。摺漆用の刷毛としては「胴摺刷毛」というものがある。これはさらに分厚く腰もあるらしい。その為、使い勝手がさらに本格的っぽく、流石にお父さんには持て余しそうだったので止めておいた。

 毛厚が薄い方は錆漆用にと考えた。錆漆の仔細は後述するが、用途と漆の種類が違う事になるので使い分け品として購入。同じ薄さで幅が狭い物は、見た目通り細かい所を塗る為の物としてだ。

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