家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

日本銀行発行支持投票券

 で、見つけた。現代に残る漆刷毛の原型を創られた方のご子孫のサイト。

 徳川四代将軍家綱の治世の頃、武家にも関わらず発明されてそのまま刷毛職人となられたそうで。それから三百年以上も続く漆刷毛師の家柄となったとの事。現在のご当主は文化庁なり何なりから認定やら賞やら色々頂くような方。創られた刷毛にしても、人間国宝等の方々も使われるような代物らしい。サイトの内容を隅々読んでいくと、まぁ、何ともご立派なのだ。

 

 さて、こういう歴史もあって品も本物となると、決まって見受けられる売り手姿勢は「厳格さ」「厳かさ」等々の構え。お父さんの語彙力では限界があるので平たく言うと、「値打ちをこく」だな。それは至極当然。お父さんが売り手ならやはり値打ちをこいてアピールする。こういう技術や伝統が蓄積された上に手作りとなると、価格が高くなるのはまず当たり前。価格で大量生産品と同じ土俵では闘えないのだから、違う土俵の品だという事をお客には分かってもらわないと。

 また、職人本人にすれば「黙して語らず」だ。平成の世では自作品を誇る姿勢は受け入れられているような気がするが、昔気質の方は今でもそういう事はされない。慢心排除な男気と向上心に溢れているからとかとかだ、と簡単に書くとそう思う。

 

 だけどもその漆刷毛師のサイトは、手作り感があり厳かな雰囲気は無い。自作品等のアピールをされているが、と言って値打ちをこいている感は無い。しかし、愚直さは感じる。一方、廉価版の品も販売されておられる。その品名には「くん」付け等の仰々しさとは反対を行かれ、馴染みのお客さんから如何なものかと言われているそうで。一見のお父さんでもそう思った。

 

 さらには、送料は全て条件無しで無料。さらにさらに、極め付けなのは代金支払の費用も無料。代引き手数料も不要、銀行振込も不要。

 企業間取引では顧客側から代金振込の際、有無も言わさず振込手数料分を引いてくるなんて事は普通にあった。集金の手間暇が無いんだから構わんだろ、という理屈か。しかし、個人向け通信販売業者のほとんどは、納品の経費である送料も集金の経費である代引きや振込手数料も、有無を言わさず顧客負担。又は沢山買えば負担してやる、というのが常識。

 

 この常識に慣れ切っているお父さんは、代金支払い費用までもいらないとは恐れ入った。 お父さんも大人なので、諸々の手数料が不要になっているのは商品価格に含まれているからだ、ぐらいには考えられる脳みそは持っている。しかし、この漆刷毛師の方はそんな単純な事でそのようなサービスをされているのではない、とお父さんは思う。

 

 そのサイトで刷毛を購入する為にはクリックだけでは叶わない。電話やFAX、又はメールにてやり取りを要する。漆刷毛師のご当主は、自動的に受注出来るシステム導入が簡単な事は承知ながら敢えてされず、顧客とのコミュニケーションを取りたいとのお考えとの事。漆刷毛という身近ではない品の性質上からかもしれない。

 そこから考えるにこのご当主は、塗り師本職等のお得意さんだけでなくお父さんのような素人を見ているのだろう。値打ちをこいたサイトにしない事も、黙して語らずの逆をされている事も、入門用の廉価版刷毛を作られている事も、それに「くん」付けした品名にされた事も、購入に関する手数料を一切無くしている事も、割愛したその他諸々の事も、これに繋がっているとお父さんは思うのだ。

 

 このご当主、先代の父上からは跡を継がない方が良いように言われていたらしい。漆刷毛師という仕事の先行きを踏まえられての事だろう。実際、技術職として大手企業に勤められていたらしい。でも、それを投げ打ち先代に師事し漆刷毛師になられた。ただ、漆刷毛を作るのはなかなかの体力仕事らしい。また、工程上自身の歯や膝を酷使するようで、先代は歯がボロボロになられて現ご当主は膝をいわしておられるようだ。

 それでも、脈々と続く技を継承され、漆による日本の伝統工芸を道具面から支える道を選ばれたんだなぁ。さらには、ご子息と思しき後継者の方がおられるようで。家に伝わる技や漆工芸を守るだけでなく次に繋げていく為には、裾野を拡げる必要があるとお考えじゃなかろうか。職人として物だけ作っておけば良し、とはいかないのだろう。

 

 技を守り伝える為に必要なものの一つはカネだ。いくら綺麗事を言おうが、カネだ。お金の見方は人に依る鏡のような物。お金が汚く見える人間はその自身に汚い面がある、とお父さんは思っている。

 それを踏まえてここで言いたいカネは、支持投票券としての物だ。不買運動と真逆の意味合。事業継続の為にはお金が必須。また、継続以上に儲かれば人が集まる。とは販売者である相手方のお話。購入者のお父さんとしては「今後も頑張って下さい」の意だ。

 こうなると千円や万円違いは大した問題では無い。通信販売が為されていないもっと優れた刷毛がもしかしてあるのかもしれない。が、この際それは探さない。この方から買う。最低限必要と思われる刷毛は値段を気にせず買うよ、買う、買う。と言うか、是非投票させて下さい。