家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

嘔吐的塗布作業

 色鉛筆だろうがペンキであろうが古色であろうが、着色作業は気が進まない。詳しくも無い。ましてや漆だなんて、一体どういう塗料具合か想像がつかない。だからこそ、古民家先輩の申し出に飛びついた。

 そして予想外のプラスチック製のヘラ。接着剤を塗り拡げたりするのではあるまいしヘラを使うだなんて軽くパニック。塗布道具と言えば、刷毛や筆や布やスポンジしか触った記憶がない。

 

 いざ実践。んんん、予想通りに違和感が半端ない。

 前述通り、お父さんが担わせてもらったのは仕上げ塗り。既に木地には漆が塗られていての重塗り。硬い物に粘性がある物を塗り拡げる行為。これを例えるのなら、お父さんが知る範囲だと車体に液体ワックスを塗るような感触だ。二人はまだしも、孫以降の時代では車にワックスを塗るという作業は世の中から消えているかもしれないな。もしそうならば読み流しておくれ。

 ただ、この例えは言い得て妙ではないかと自分では思う。車体にワックスを塗り拡げるのなら、通常はスポンジを用いる。それをヘラでやる。曲面等ではなく平面の車体であっても非常に違和感がある。さらには、油絵や左官程の塗厚ならまだしも、薄く塗り延ばさないといけないとの事。確かにどうせ拭き取るのだからたっぷり塗っても意味がない上に勿体ない。まさにワックス的。でも、薄塗り要請もあってとてもやりにくい。

 

 ヘラによる薄塗り拡げ。そしてプラスチック製。これらは古民家先輩独自の施工法であり邪道中の邪道、悪魔の所業、だとかではないらしい。そのヘラは漆道具を扱う業者からの購入品で数百円かの物との事。塗布面積が少ない事もあってそれで十分なのかもしれない。

 頭では理解した。しかし、違和感の甚だしさは一体何なのだ。この時、体調不良で二日酔い。この状態で他人様の仕上げ施工を行うお父さんが、それこそ悪魔の所業。その体調による気持ちの悪さとは別に、塗っていて気持ちが悪い。気持ち悪さは「爪を立てて黒板を引っ掻く」とまではさすがに言えないが、という感じだったかな。

 フラフラの作業中、塗布面積が遥かに多い自分の施工時には絶対にこれ以外の道具を模索するぞと心に誓う。これはとても座学では分からない。漆という塗料に触れる事とプラスチック製ヘラを使用させてくれた彼には感謝。

 

 その後の調べ。前述通り漆塗りにヘラが使われ、プラスチック製も用途によって用いられるらしい。しかし、主となるのは桧製。杉ではなく何故桧かは判然としなかったが、恐らく硬さ具合じゃなかろうか。まぁ、判然としない時は先人に従うのが基本姿勢なので深く考えない。

 ただ、プラスチック製が気持ち悪かったのは、木地に対して硬過ぎる事があったからかもしれない。これは、プラスチック製が硬い事による適した用途がある、という記述による。又は、ヘラとしてのしなりがあまり無い事からかもしれない。そう考えると、お父さんが抱いた違和感等が頷ける気もする。道具が合わなかっただけではないかも、と。

 しかし、本当の所は未だによく分からない。単純に二日酔いの所為だったりして。