家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

漆 vs ホーロー

 さぁ、いよいよキッチン天板へ漆塗りを行うのだ。本構想準備期間は一年強。施工なんかの行動や結果もだが、そこに行きついた計画等も大事と考えるお父さんにとって、その期間に触れない訳にはいかない。

 

 何故、キッチン天板に漆を使う事にしたのか。それは以前に書いた通り。漆を建材として目にはしていたのに意識をしていなかったお父さんが、古民家先輩が断念したものの漆を使う計画があった、という旨の話を聞いた事からによる。キッチン天板を木材とする場合の心配事、水。これに対処するのは何かの油か、とそれまでは考えていたお父さんは漆を使う事を思い付いたわけだ。

 

 キッチン天板に漆を施す。インターネットから眺める限り、キッチン自体を造作する施主施工者はなかなか居ない。その上で漆だ。これ、全国の施主施工者の中でもこのような施工を行うのは稀有、若しくはお父さんが唯一ではないか。我ながら凄い、偉い、カッコいい。

 と思いきや時間を掛けて検索すると、本職による漆仕上げのキッチンカウンター等は存在する。では、非本職が造作物に漆仕上げは出来ないだろう、と思いきや存在する。写真で見る限りとても美しく仕上っている。素人木工家の方による造作家具でも、やはり美しそうな出来栄えの物が見受けられる。これらを結びつけると、キッチン天板漆仕上げ施工なんて何てこと無い一つの工法じゃないか。何なら、家屋を施主施工しておいて、こういう事をせずに既製品を買って業者に設置させるなんてどうかしている。

 

 とまでは流石に思わないので、既製品も一応再検討してみた。材料費や人工が結構掛かる事が予想されるから、改めて買うという選択肢があるかもしれないと。

 相手はそれを飯の種とされている玄人集団、消費者心理をくすぐる製品のオンパレード。機能面は色々考えられていると感心するし、デザイン性も良いと感じる物が多い。これは年々進化していると言えるかもしれないが、ならばと振り返る。十年、二十年経ったものは、何だか古ぼけて遅れた感じが否めない。今時の住宅みたいだ。三十年か四十年経ったら家本体ごと新調だ、と大盤振る舞いする気持ちはある意味よく分かる。

 

 では、デザインが変わらない物なら良いのか、とも残念ながら思えない。これ、以前にも書いたような気がするが、他メーカーと一線を画す既製品キッチンがある。それはホーロー製。ホーローとは、鉄板地にガラス被覆がされた物。ガラス被覆なので汚れが拭きとり易い。でも、そのガラスは簡単には何故か割れない。そんなガラスに覆われているので下地の鉄も容易に錆びない。一般的システムキッチンは収納戸扉等はプリント合板とかなので、経年劣化でみすぼらしくなる。ホーローだとガラスなのでその心配は極端に低そうだ。漆仕上げよりもガラス仕上げの方が色々な面で良さそう。

 

 お父さんとお母さんは、このホーロー製が耐久性や清掃面で頭一つ出ていると思っていた。ただ、これ、かなりダサダサなのだ。

 昭和40年代とか50年代とかならかなりモダンでハイセンスかもしれない。昭和中期以降築で改修歴が無い家屋だと結構目にする。そこでだとある意味違和感が無い。では、それ以上に古いこの伝統構法家屋でだとどうか。かなり疑問。

 ホーローだと頻繁なデザイン刷新は出来ないのだろうと想像する、地が鉄板だし。しかし、鉄板であっても自動車ぐらいの周期ぐらいでフルモデルチェンジは出来ないものだろうか。いや、実はしていてアレなのかも。ホーロー使用箇所を天板等に限定し、その他はデザインが新しくなっている物がある。しかし、その他という箇所はホーローじゃない箇所。

 

 良く言えば堅気なメーカーであり好感を抱くものの、ダサダサがネックとなり積極的に採用検討とならない。これは完全に好みの問題。そのデザインが好きだとか、兎にも角にも実用性で良いだとか人それぞれだろう。それが故にキッチン選びは心理的要素も結構大きいと思う。そんな寄り道をしたりしながら元に戻ったのだ。