家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

接着材としての漆

 漆接着を面倒、と思ったのは何より一から調べたり学んだりする事を要するからだ。そういう事は嫌いじゃないが、時間がなぁ。インターネットでは、信憑性ある明確な理屈や答えが多いとは言い難い。よって、最終的には勘や推理等で自己決断ってな具合の事や物が多い。なので、やはり時間がとても掛かる。漆も例外では無い。と言うか本施工での代表格の類。

 

 そんな中、「金継ぎ」をされている本職と思しき方による、漆の接着材としての考察文章を発見。「金継ぎ」とは、割れたり欠けたりした器や壺等を修復する技法の名称だな。このご考察内容は、抽象的や経験則で無くとても理屈的。自身の手記は抽象的且つ省略表現が多いくせに、何も罪が無い他人様のそれには食傷気味のお父さん。順立って書かれた分かり易いその内容は、文量はあっても面白くさえ感じる。お父さんとはえらい違い。

 そのまま写したい所だがお行儀が悪そうなので、抜粋省略編集内容にて書く。

 

 塗料としての漆について後述する際に改めて書くが、漆の硬化には時間が掛かる。表面だけなら条件次第では1時間程で硬化している。しかし、塗布面下奥深くとかになると好条件であっても数日を要したりする。オープンタイム問題は漆のこの性質により解決しようとする次第。

 これ、業務としてならこの長時間を要す面は非常にやりにくそう。接着力が発揮されるまで次工程に移行できない。そもそも器補修の際に破片を貼り合わせた際に、それらが全く固定維持が出来ないのはやりづらそう、今のようにテープ保持が出来ない昔なら特に。

 漆のそんなオープンタイムが用途によっては長過ぎる、という事で生まれたんじゃないかと想像するのが「糊漆」と「麦漆」。

 

 糊漆は米糊が混ぜられた物。米糊とは米のデンプンによる接着力を利用した物で、二人も幼稚園やら小学校で触れたデンプン糊と同じような物。米は昔から接着材としても使われ、お父さんも幼少期に冷やご飯を糊として使っていたし、本施工の木部接着に少し採用検討した事は以前に触れた。

 デンプンと一言に言っても、αデンプンとβデンプンとがある。半透明な米粒のままの状態であるのはβ。これは粘性が無くて糊にはならない。しかし、加水と加熱をされるとαに変化し、これは粘性を持ち接着力がある白い米粒になる。冷えると放水しながらβに戻る。温かいご飯はモチモチしているが、冷えたご飯はモソモソするのはこの性質変化によるもの、らしい。

 

 麦漆は盤石糊が混ぜられた物。盤石糊の接着力は小麦粉のグルテンによる物。これはお父さんも馴染みが無く今回の事で初めて知った。

 小麦粉と適量の水を混ぜ続けるとドロっとした液体から糸束状になってくる。加水と攪拌により小麦粉に含まれるグルテンが結合されて粘性がある繊維状になるとな。その粘性はデンプン以上。これまた接着力が優秀らしい。

 

 これらを混ぜる目的は初期接着力を得る為だとの事。元々接着材として使われる米糊や盤石糊を混ぜる事で、漆の接着力が発揮されるまでの間の時間稼ぎをさせるようだ。

 なるほど、ではどっちかを使えば目的達成だな。と思ったもののそう短絡的ではないようで、それを考察されている内容だったのだ。