家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

接着剤から接着材への迷走

 そろそろ漆の事を書く段になった。と言っても塗料としてではなく、接着材としてだけど。

 

 キッチン天板は接ぎ板。板を複数枚引っ付けて大巾板にしているわけだな。この引っ付けるのに使われているのは接着剤。板接ぎに使う接着剤の種類はその加工所による様な感じだな。

 

 接ぎ方も幾つかあるようで。お父さんが色々サイトを見ていると、玄人素人関わらず木工家の方の全員なのかと思う程、「雇い実接ぎ」によるものばかり。今後それは出てくる事柄だと思うのでここでは省略するが、強度がある接ぎ方だ。

 雇い実接ぎが普通なんだろう、と思っていたんだろうお父さんは発注時に確認していなかった。この接ぎ加工は、無愛想無返信剣道加工業者の仕事。天板材現場加工により新たな断面が出てきても、一向に雇い実が現れない。そうだ、タダのイモ留めだったのだ。一番簡単で、一番強度が弱い接ぎ方。この業者の事だ、接着剤は恐らく普通の木工用ボンドに間違いない。

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 としても、それで構わないだろう。現代科学の接着剤の強度はそれなりに十分あると思う。木工用ボンドなんてちゃんと接着させれば剥がそうとしても剥がれずに、樹種によっては木の方を割らせる程に強い。木の繊維結合よりも強い物に、それ以上求めるのはちゃんちゃらおかしい。

 寿命については家屋本体とは違い、設備の寿命にはある程度妥協しても良いので大目に見る。ここはドイツではなく日本。短寿命家電だけでなく住設にも短寿命が慣れっこになってしまっているから消極的寛容。酢酸ビニル樹脂系エマルジョン接着剤、商品名「木工用ボンド」がどれ程の耐久性があるか知らないが、きっと20年や30年は問題ないんではないか。お父さんが幼少期からある接着剤なのでそう思い、天板L字接合の接着剤にも木工用ボンドを予定していた。

 

 が、考え直す。木工用ボンドは耐水性が無い事を目の当たりにしたからだ。原木強制雨曝しの際、原木割れ防止用に塗ってあったこのボンドが、硬化後半透明色から硬化前のような白色になった上に手で容易に千切られた。時間を大して要さずに。

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 俄か程度には知っていた耐水性の低さだが、これ程かと驚いたのだ。使用箇所はキッチン天板。表面は漆コートでも、何かの衝突等で木地が露わになる事は考えられる。そこから水侵入があるとどうなるの。既に板接ぎ接着剤として使われている分は仕方が無い。しかし、寿命以前のレベルの不安があると分かった物をわざわざ使うのはなぁ。

 

 そこで、新たな接着剤を入手。DIY大国にてメジャーらしきな物で、接着力もさることながら耐水性がある優れもの。さらには、写真を取り忘れるぐらいこの容器が素晴らしい。特許等の問題なのかもしれないが、どうして国内メーカーも同じ容器を使わないのかと思う程の使い勝手の良さ。大雑把な面と細やかな面が混在しているな、あのDIY大国は。

 

 が、また考え直す。この素敵な接着剤はオープンタイムが10分なのだ。それを承知で迷いながらも購入した。しかし、買ってから思い直す、10分間で全ての接着工程を完了させられるだろうかと。オープンタイムとはそういう意味なのだ。

 ま、厳密に10分以内でなくとも11分で十分かもしれない。12分でもいいかもしれない。けど、13分や14分ならどうか。キリが無いのでメーカー推奨10分を厳とする。そうすると、耐水性以前に接着力を発揮できないかもしれず。そうなると意味が無いよな、と。

 

 DIY大国仕様の接着剤購入に迷っていた時、もう一つ考えていたのは漆。自然素材原理主義者ならこれにて迷う余地は無さそう。だが、お父さんは幸か不幸かそうではないので、そこまでするのも面倒だなと思っていた。しかし、10分の壁の解決策が見出せない。

 

 こういう流れで接着材として漆を使う事に至った次第。今回の天然由来と言われるような材の選定についてこれまでには無かった理由なのだ、施工性は。施工性の為の新建材選定とは数多あるが、その逆とは我ながら数奇と思う次第。

 ちなみに、少し前に自然素材について書いたが、あれはこれも想定した事前説明の意味合いも含んでいる。探検さんが鉋等に続いて、また誤解等をされて引いてしまう等も嫌だしね。