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家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

設計の「先生」

施工:母屋設備(造作) 建築士・施工者

 思考の混乱に苛まれる当時のお父さんの状況を読んで、二人はどう考えるだろう。

 

 薪ストーブ搬入時に使用した台車を利用する。そう考えたのなら喜ばしい。いくらお父さん並みの重量だからと言って、台車に載せられない事はない。寧ろ、薪ストーブと違って長尺物が故に、片方を床に置いた状態でもう一方をお父さんとお母さんで持ち上げられる。薪ストーブの時のように探検さんがおられなくとも可能。

 キッチン室内でのL字接合をすれば良い。そう考えたのなら嬉しく思う。二人で持ち運べない状態にせず、単材状態で予定地に運んでから現場接合をする事は可能。

 

 現場を知らない状態の上に思考材料が少ない中で、それら案を出せたのなら賢いと思う。駄案や愚案を思い巡らす前にそれらは考えた。しかし、現場に現在いる上に、次の工程を把握しているお父さんにはこれらは採れなかった。

 前者の台車案は、L字接合部の強度不安が拭えない。台車に載せるとなると、寝かせるとやはり入らないのでL字短尺側がそびえ立った状態になるだろう。短尺側だけで30kg近い重量。これが台車に載って揺れながら移動。怖すぎる。そもそも途中の差し鴨居をかわせない。

 一方、後者の現場接合案は不十分。板と板を接合するとなると、それぞれが面一にならないといけない。それぞれが傾かずに水平にもならないといけない。でないとズレた接合になったり、面全体での接合とならない。そもそもキッチン室内は、探検さんにより捨て板が撤去された根太状態。捨て板を復活させたとしても、キッチン天板はキッチン室内に一杯一杯の大きさ。そういう場所にて重量長尺物を単独で微調整移動させながらの接合は非常に困難。

 

 さらに大きな足枷がある。接合状態では天板をヒックリ返せない事だ。一人では出来ない程の重量と形状。そもそも人手が少々あっても、キッチン室内にてひっくり返す余地は厳しい。

 これは、次の工程である漆塗を踏まえてだ。漆じゃなければこの事をさほど足枷に思わない。天板裏に潜って上向きで塗れば良い。しかし、相手は漆。天板裏に塗っている最中に滴り落ちてしまうと大変そう。その他諸々後述していくが、兎にも角にも大変そう。

 

 本職現場にても、施主や設計者の思い付きや思慮浅さに振り回される事がある。もしかしたら「よくある事」かもしれない。

 ほとんどそうかもしれないが、施工者は設計者の事を「先生」と呼ぶ。これ、何も尊敬の念を抱いてのものじゃないのは、若輩だったお父さんでも分かった。施工者同士だけの会話にて、言葉の端々で「現場の事をよく分かっていないで好き勝手に設計して困るよ、あの先生様は」という皮肉感たっぷり具合が伝わって来る。これは一人や二人だけじゃない。

 いつもは苦笑程度で流してきたが流石に今回ばかりは、施工者のお父さんによる設計者のお父さんへの皮肉や愚痴をしんどく感じた次第。

 

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