家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

施主施工の不透明さ

 蟻桟の通り道を埋めた事で板材として完成。ようやく、寸法切りの上でL字型にする為の接合部を粛々と加工。埋めた上でのこれら加工、2時間か3時間程度だったろうか。

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  一山超えた。そして、新たな大問題。長尺板と短尺板をどのようにして接ぐのか。正確に言うと、接合後の設置場所への移動や漆塗りを踏まえるとどうすれば良いのか。

 

 設計監理を除き、三千万円規模の施工にて二千万円程を浮かせる目算の本施主施工。この金額は、施主施工に先立って時間を掛けて作った自己見積額。全体を見通す為に必要だったものの、おじいちゃん建築士は概算レベルでも一切作成する気が無く、逃亡工務店社長は作成するのが嫌で逃亡したので、仕方なくお父さんが作成。施工に先立って解決すべき事、想定すべき事等は山ほどありそうだ、とは想像出来るだろう。予算なんてものはそれの筆頭の部類なのに。

 

 施主施工のレベルも色々あって、下地までは完了していて漆喰だけを施主に塗らせるだけでも「当事務所は施主施工を応援しています」「施主施工を推進」とご立派に掲げる設計者や施工者が普通に存在する。面倒臭さがあまりないのに施主の満足感を満たしてあげられるんだから、それぐらいが丁度良いわな。

 お父さんもそれぐらいが丁度良かったが、残念ながらそうではない。施主施工と言っても、施工だけの話ではない。工務店等や主として現場の主役になる大工職がしてくれる事を自分が一切行う事を意味する、お父さんの場合は。

 

  その一例を挙げてみるか。本職が現場にて怪我等の事故を起こした場合の責任について。現場管理の話だな。一例と書きながら、お父さんには10年以上前に解決済の内容だけども。

  これが問題になるのは、施主本人が現場管理者となる場合だな。工務店等に工事依頼すると一般的には請負工事となり、現場の責任は元請けに帰属する。一人親方などの下請けが事故を起こしても現場責任者の元請けが事を収めるので、施主が責任を被る事は本来は無い。

 

 では、施主から直接施工依頼される本職とはどんな方か。今まで書いて来た通り一人親方、他にも専門工事業者の被雇用者だな。工務店等元請け従業員の本職に施主が直接発注、という事はまぁ無い。

 一人親方は自身が社長、自身が資本の方。こういう方は、真っ当ならば自身で労災保険に加入されている。現場で事故を起こせば、元請けの過失でもない限りは治療費やら休業補償などしてくれ無い。何なら、過失が元請けにあっても無い事だってある。仕事を貰う立場故に、不条理な元請けであっても強く言えずに泣き寝入り、という場合だ。いずれにしろ、所属団体等の保険に加入されているのが真っ当。

 

 施主による本職への直接発注現場では、元請けを一人親方自身として現場の責任は負ってもらう。常傭とするとしてもだ。そして、何かあれば施主は現場の責任を負わない事とし、また労災保険を利用してもらう。これらを事前に約束して書面に交わし、労災保険の加入証書を事前に見せて貰うとかもすれば良い。この対応を嫌がるような本職とは契約をしない方が賢明だ。保険に入っていない、という弁があってもそれは掛け金をケチっているとかなので、やはりそういう人はやめておくべき。

  

 てな事で、この一例は施主施工を躊躇させるような事案ではない。施主施工への本気度があれば解決する問題だ。その他施工後の現場内の事も、施主が本気なら大抵の事は解決策があるだろう。

 心配ならそれなりの予算と時間の余裕確保をしておけば良い。お金や時間をケチった施主施工は低品質や不良工事に繋がったり、施工時や将来に渡る危険性を孕ませる場合もある。素人が本職の真似事をするのだから当然。いつまでたっても躊躇するぐらいなら、施主施工なんてやらない方が良い。

 

 それに比べれば現場外の事の方が大変かも。巷の請負工事でもそういう場合があるし、以前のお父さんもそうだったし探検さんもそうらしい。

 例えば、ご近所対策は一考が、場合によっては二考や三考が必要。施主施工は工期が長くなるので、本職施工工事では許容してくれたご近所さんにしても事情が変わって来る。本施工においてもこの心配があり、それを踏まえたご近所付き合いを行った。

 まぁ、これにしても全く対応策が無い事は珍しいのではないか。もしそういう事があると、そもそも工事自体が出来ない環境なのかもしれないな。この家にしても、将来はご近所の代替わりや入れ替わりにより、もしかしてもしかするかも。よって、油断はしない方が良い。