家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

「吸い付き」と「送り寄せ」

 ようやく桟作業は終えたがこれは材料の準備のまだ途中過程。まだまだこれから。

 

 板材発注時に「伸び寸法」を頼んでいた。これをまず切り落とす。

 材料の余白分の事を指すらしく、指定寸法より材料周囲寸法に少し余裕を採る。端材となるなら何かに使えるかもという事と、自分が傷も付けず上手く加工出来るとは思っていなかった事から、伸び寸法を目一杯にしておくように業者へ依頼していた。

 桟挿入時にパイプクランプを破損させてしまう程の力は、板端部にも思い切り掛かり破損陥没。予想外の理由なものの、案の定で余白は役立った。その不具合箇所を含ませての切り落とし。

 

 次、締まり勾配蟻ホゾを埋める。

 蟻桟が挿入される側の板面は、その通り道としてのホゾが空いたまま。これに応じた蟻加工を付けた棒を差し込んで、程よい所で切り落とし。よって、この埋め木棒の断面は表に出てくる。

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 失敗した箇所の無駄蟻ホゾも埋める。

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 この埋め木が現れる事を良しとする木工家の方もおられれば、そう思われない為等にて「送り寄せ」とか言う桟を入れる方もおられるようだ。これは板の端部から入れるものではなく、桟を入れたい箇所からちょいとズラして入れられる方法。板端部に桟の通り道が不要なので見た目がスッキリ。

 

 本題から外れるが、その後に改めて悩み、今後は触れるかは分からないのでこの機会に触れておく。それは、お父さんは「送り寄せ」の方が良かったのかもしれないと思った事。

 お父さんが施した締まり勾配蟻桟蟻ホゾ加工は、「吸い付き桟」とも言われるようで、桟全体が板に吸い付くような締まり具合になるのが売り、と言えるだろうか。天板の反り止め効果としては最良かと思われ、それが採用理由ともなった。

 一方「送り寄せ」は、興味があれば自分で検索してみればよく分かるが、蟻の箇所が「吸い付き」の半分だけになる。反り止め効果は理屈では半分となり、それを良しとしない木工家の方もおられるようだ。

 

 で、お父さんは何を悩んでいるか。

 それは、「送り寄せ」の精度が悪いと反り止め効果が全く無さそうな事。なのに、お父さんは背伸びをしてしまったかな、と。

 これは少し前に少し触れたが、一ヶ所効いてないかもしれないと気になる所を残してしまっている。それについて、他の部材やら漆により固められるから大丈夫だろう、という願望により目を瞑ったわけだ。ならばだ。そもそも「吸い付き」じゃなくていいんじゃないか、と自分に突っ込む。

 

 お父さんは経験を得た上に治具定規も完成し、今度は「吸い付き」で失敗が無いとしてもまだ悩む。それは、「送り寄せ」は外す事が出来るらしい事。

 これは、天板塗布作業で有効だと後から思った。「吸い付き」の場合、先述の通り、通り道だったホゾを塞いでからの塗布作業。そもそも手では外せないぐらいの締め付けで入っているし。塗布作業をより美しく行う為には、部材は外した状態が良いだろうな、と。

 

 これについては、今後あるかと思う木工塗布作業において思う所。キッチン天板に関しては、外せない「吸い付き」桟が結果的に役立つ事になったので良しとしている。