家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

ピッタシピタゴラ

 さぁ、施工再開に伴い施工記録内容の再開、「ピタゴラスの定理」について書くぞ。

 

 これを読む二人が、もし十代で現役学生ならば説明不要かもしれない。二十代以降ならちょっと怪しくなってくるかな。学校で習った事は使っていないと忘れてくる事は多いからな。平面幾何学とか難しそうな所は省いて、軽く説明を一応しておこう。

 「ピタゴラスの定理」とは、直角三角形の三辺の長さが数式にて成り立つよ、というものだな。思い出したかな。その式は、斜辺をaとしてその他二辺をb、cとすると、「a二乗=b二乗+c二乗」となる。「三平方の定理」と教わったかもしれない。ますます思い出したんじゃないかな。若しくは、遠い記憶のままだったりするのかいな。

 

 これが施工とどう関係あるのかと思うだろうか。いやいや、大いに関係ある。種類や分野にも依るがモノ作りにおいて算数は勿論、数学も多用されている。建築現場も当然しかり。ピラミッドを建てようが、掘立小屋を建てようが使われる。ピタゴラは、その中でも使用頻度が高いものじゃないかと思う。用途としては直角を得る為だ。

 

 キッチン天板の反り対応をする為の締まり勾配蟻桟蟻ホゾ作業。これを施して反りを止めた上で、板の加工を行っていきたい。L字型の内、短尺側のみに施したものの、蟻ホゾに蟻桟が最後まで入らない物がある等の敗退。無念の中断でトラウマを抱えた。二の舞を犯さない為、トラウマ払拭の為、短尺側作業の一人反省会を実施。

 その一つとして勾配治具定規の精度確認を行う事とした。これは、天板側辺に対し蟻ホゾ溝の右側を直角、左側は先に行くほどホゾ巾が狭まるよう斜めに、トリマをあてがいながら掘る為の治具定規。

 

 材等の直角を作ったり確認する為の道具はいくつかある。ただ、これらは100㎜や150㎜までの物。それ以上の物となる汎用性が低いので持っていない。過去の現場経験では見た事も無いし、売られているのかも知らない。売られていても高いだろうから買わない。そこで活用するのがピタゴラ。天板巾が700㎜近い大物なので、この治具作りでもピタゴラにより直角を出し、それを基準線として斜めの寸法も出していた。

 

 狂わない造り方をしていた為もあり特段問題無い。では、やはりお父さんの作業動作自体に問題点が集約か、と思い耽っている際に脳内電球点灯。もしかして「√(ルート)2」が問題じゃないのか。

 √2。「一夜一世に人見頃」だ。漢字が違うかはどうでもよい。1.41421356の語呂合わせ。√2は無理数だからこれがまだまだ続くが、それもどうでもよい。小数点が複数桁ある時点で問題だ。これだとあくまで近似値しか出て来ない、ってな話。

 ピタゴラによる直角出しにて、二等辺直角三角形の場合は二等辺の長さを1とすると斜辺は√2。お父さんは、実使用において斜辺を1.41にて計算。何かの材を加工する際、その材の巾は91cm。大きな定規と言えば1m。大体ここらが最大寸法であり、これに対して斜辺寸法は1.41m弱程度になるわけだ。人間が両腕を延ばしてスケールの両端を抑えて計測するのにも1.41m程度ら辺が大体限界。そして大体の直角を出す。これにすっかり慣れ切っていた。

 

 「1:1:√2」。覚えているかもしれないが、これ以外のピタゴラで「3:4:5」がある。「5の二乗=3の二乗+4の二乗」だ。近似値だとか無理数だとかではなく、整数によるピッタシピタゴラ。人体の形状からお父さんはピッタシピタゴラを使う機会がほぼ無かった。もしやこれではないのか、と再計測すると近似値ピタゴラ直角定規はミリ単位もの修正発生。あぁぁぁ、これかよぉぉぉ。

 

 建築に関わらず本職や専門家と言ったって、思い込みなり慣例や習慣等で、適当だったり時代遅れだったり間違いに気が付かなかったりのまま、「俺様はプロでお前らは素人」的仕事をする人間など腐るほどいる、というような主旨の事を度々書いてきた。所詮は人のやる事、これは絶対的な事実だ。

 こう書くお父さんだからと言って例外ではない。お父さんもやらかしていたし、やらかしてしまう。√2での誤差は問題にならない仕事をしていたから尚更。少なくともミリ以下精度が問われる木工においてこれは致命的だ。