家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

水打ち量考察

<水打ち量>

 塗り材の水引き対策と、塗り材と下地材との混和接着材として下地へ水打ちする。その水打ちはし過ぎても構わない、と考えていたお父さん。勿論限度はある。下地表面の泥粒子が流れる程は打ち過ぎ。なので、イの一番で壁全面に水打ちをしてから、材を塗る直前に塗り区分域にもう一回、という具合。

 

 こういうお父さんに対し、古民家先輩は「水打ちの量が多すぎたりしないのか」と。

 土壁の大斑直しや中塗りを施主施工で本格的に行ったのは、ネットでそこそこ検索しまくったつもりのお父さんの知る限りだと可能性を含めて、平成27年調べで古民家先輩と棕櫚刷毛紹介おじさんだけ。昔は多かっただろうが現代日本には数人しかいないかもしれない類となられた古民家先輩は、中塗りが仕上げ。お父さんと違って逃げる余地が無い。そんな古民家先輩にだからこそ施工具合はどうだったかと、中塗り開始頃で現代日本の絶滅危惧土壁施主施工者予備軍のお父さんが尋ねてみた際の会話での一つだ。

 

 お父さんが「水打ち寛容派」とするならば、古民家先輩は「水打ち慎重派」のようだ。その先輩曰く、水打ち量は坪当たり2ℓだと。お父さんも計ってみたら、最低で坪当たり1ℓ。かなり多い場合でも1.5ℓ程度だ。頭混乱。なんで??

 

 この後日となる探検さんご来訪時。施主施工目在来工法科の中では少数派かと思われる塗り壁属の探検さんは、土壁下地への泥材中塗り仕上げ施工は古民家先輩邸でだけのご経験じゃないかと思う。その探検さんが当宅で中塗りされた際は、水打ち一回のみで塗ろうとされていた。お父さんが横からしゃしゃり出て乾燥色になった箇所に二回目を打った次第。

 あれほど材の水引き意識が高い探検さんなのに、と不思議に感じた。これは、古民家先輩現場では一回打ちとかだったからそうされたのかもしれない。若しくは、探検さんの背中越しから厳しい目で見ているお父さんの存在のせいで、緊張をさせてしまった為かもしれないけども…

 

 中塗り開始間もなく頃。自分なりの解を得ておきたいと、悩む事幾日。こうじゃないかというものは出た。

 

・塗り材含水比率の違い

 もしかしたらもしかして、水打ち量を気にされる古民家先輩は、塗り材の水も比較的少な目にされているのかもしれない。お父さんはこの逆だったりするのかもしれない。結果、同じぐらいの水使用なのかもしれない。

 

・水打ち道具の違い

 古民家先輩は手動噴霧器を使っておられたはず。お父さんは水道圧利用のミストアタッチメント使用。どちらも霧なのだが、少なくともお父さんが持つ手動噴霧器だと水の粒の大きさが全く違う。噴霧器の方は、直径1㎜は余裕でありそうじゃないかと思う程。雨滴レベル。ミストアタッチメントによるものは自然発生する本物の霧のようであり、水滴というよりも水粒子かというぐらい。風が少し吹くと流される。

 

 もし古民家先輩の噴霧器がお父さんと同じような物だと合点がいく。

 壁面に軽く水打ちしても水粒が大きい事で点々状になる。ちゃんと水の面打ちをしようと思うと、同じ箇所に噴霧する量が増える。ミストアタッチメントだと瞬時に水打ち箇所が面となる。水打ち量自体は少ないのですぐに壁は乾燥色になる。よって二回打ち、時には三回打ちをする。それでも総量としては、手動噴霧器よりも少なくなるのではないか。

 

・下地状態の違い

 古民家先輩邸は荒壁から新造されている。当然、中塗り下地であり水打ちされる面である大斑直しも新造。片や当宅は、荒壁はほぼ既造、大斑直しは既新まちまち。最近造られた土壁と70年以上前の土壁の違い、という事がもしかしたらちょっと関係するかもしれない。当宅が古い分、土壁の気泡が埋まっていて水を吸いにくい、とか。

 しかし、それ以上に確実な違いは、当宅はそこそこ土壁の斑削りを行っている事だ。適当塗りの凸部をガリガリしたのだ。これにより新造壁よりも吸い込みが悪くなっているかもしれない。

 

・そもそも材違い

 泥の新旧違いや土地違いによるもの。

 新旧違いとは、古民家先輩は新規購入の泥も使われているが、お父さんは解体壁の再利用100%。新しい泥による乾燥時は思いっきり割れるが、古い泥はそれよりも割れが少ない。思いっきり割れる材という事は、水の吸い込みが比較的強そうだ。

 また、土地違いによる泥砂の違いもあるかもしれない。泥砂の違いなんてあるものか。いや、これがあるようなのだ。これは後述。