家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

「面出し」方法の施工

<「面出し」方法:施工編>

 面出しを実際に行うのは、鏝、そして鏝を操る自らの腕。まるで本職のような高度な事を行うように聞こえるかもしれない。実際にお父さんが行ったのは、素人っぽさ全開だ。

 

 まずは鏝についての予備知識、各部名称。(お父さん調べ)

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 これを踏まえて…

 

○基準の壁際移し

 マステによる基準を壁際材に移し込むような工程。これは、鏝の側ライン、又は尻ラインを使って行う。それらラインはマステに対して極力垂直。

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 そして、写真で表現出来ないが壁面に対しては極力平行。これは、マステ基準に合わせた鏝先を支点にし、鏝肩を壁に対して押す引くの加減調整を行い、鏝先と肩が共に目標平面位置になっている状態を指す。これにより出来た面が壁全体の平面指標となってくる。

 兎に角丁寧に壁際材に基準を設けていく。少々時間が掛かっても、何度だって鏝を動かし丁寧に。

 ちなみに、お父さんが持っている全ての鏝において側ライン、及び鏝によっては元のラインは直線ではない。ただ、次項作業で消えるのでその程度は構わない。

 

○基準の面化=鏝縁の定規利用

 壁際に移された基準を、鏝縁を用いて拡げる。言い換えると、壁際基準厚にされた壁際材に周囲の材も合せていく。

 鏝元を基準がある壁際に向けて、上下、若しくは左右に動かす。壁際の基準と同じになるまで均していくのだ。この時点で、前項の鏝側ライン、尻ラインによる視認出来ない程度の窪みは消えて平らになっているはず。そして、これを壁際基準面から離れた中央にも拡げていくのだ。

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 この際、壁際基準側に鏝尻が向く。これは絶対であり、基準が壁上部であれば鏝の上下が逆さまだ。

 

 気を付ける事は、縁を壁仕上げ面に対して平行にする事。壁表面や壁周囲木材に対して斜めになっていると、縁が通った所は否応が無しに面にはなるが壁全体では面にならない。乾燥完成している既存平面壁に鏝縁を滑らせると、書いている意味が分かるかもしれない。

 そして最も難しいと思うのが、一定に鏝を上下左右に動かす事だ。絶対的一定だ。土に沿って鏝を動かしてはいけない。そうしてしまうと、土を盛り過ぎている所は膨らんだまま、少ない所は凹んだままで均しているに過ぎない。一定に動かす事で、抵抗があれば盛り過ぎ、抵抗が無ければ少な過ぎ、と感じる事が出来るようになればいい感じだ。

 

 

 これらは感覚の世界であり本職の世界と思う。壁の中央域ともなるとそれまでの陸地や灯台が見えた沿岸とは違い、まるで外洋。この外洋では、鏝縁という羅針盤と自分の腕が頼り。下地が良ければ平穏、そうでなければ荒波での航海となる。しかし、臆する事は無い。左官で沈没しても命までは取られない。それに、数をこなせばそこそこは出来るようになる。

 

 こなす程に数が無い、若しくはそこそこさえも出来ない、となっても大丈夫。なぜなら、定規がある。大壁でもなければ、仕上げでもない。定規で確認し、凹んでいる所には盛って均せば良い。膨らんでいる所は、土が固まり始めていても削れば良い。大壁ならばこれらの修正も大変だろうが、半間壁程度なら可能。母屋二階東西外廻りはこの家壁の最大巾だが、それでも3分の4間強。この壁巾も時間を掛ければ修正可能。

 修正による表面の粗さが気になるようであれば、鏝や直接壁を水で濡らして均しても良い。それでも無理な箇所は、トロトロにした土を薄く鏝で撫でれば綺麗になる。お父さんはこれらをほぼしていないけども。

 

 さて、「面出し、面出し」と騒ぐお父さんの出来栄えはどうか。面出し自己採点は、完全平面を100点とすると最高80点ぐらい。最低だと60点以下の落第点壁もある。そのような箇所は、後日の漆喰塗り前に調整を要するだろう。集中力が切れてしまっていたのかもしれない。お父さんとしては平均70点台ギリギリと言ったところだろうか。壁横方向はまだ良いが、縦方向がイマイチだったりする。

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 100点目指してこの点数。目指さなければ、確実に落第点以下だった。本職によるこの家の既存土壁全てをじっくり調べたわけではないが、お父さん採点だと70点ちょっと。良くも悪くも、既存との兼ね合いは壊さない及第点だろうか。

 ただ、上方から壁が照明を浴びるとこの採点は変わりそうな気がする。それが現時点での不安であり、照明設置位置はこの事を踏まえる必要がありそうな気がする。