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家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

この家での祖先による子孫の為の左官施工論

施工:母屋土壁

 この手記では、あまり施工方法自体を掘り下げてこなかった。実際にやってみれば出来る、という事等からだ。例えば相手が馴染みがあって固形物で形が整えられている製材木なら何とでも出来るだろう。しかし、左官についてはそうはいかないかと思う。泥は雨の日や田圃等の自然風景の一物。「泥状」とかなんて形を成していない物への代名詞。「どろっとしている」は漢字で書くと「泥っと」じゃなかろうか。そんな物を手と幾つかの道具で平らな壁にするんだから、それまでに無かった未知の世界だと思う。

 

 しかし、最初に言うが数をこなすとそれなりには塗れる。不器用なお母さんも薪ストーブ上方の中塗りを行ったが、慣れれば光明がありそうな雰囲気はあった。ただ、お母さんは基準のマステを越えて塗るという、これまたお父さんの想定を軽々越えていく。これは論外。後での修正が非常に手間を喰った。

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 そうは言っても、将来の改修工事で数をこなすような状況が起きるのだろうか。施主左官施工をする事になっても、半間壁を一枚か二枚か程度じゃなかろうか。本職に依頼するとしても、果たしてその時に土壁施工を出来る方が存在されるのか、見つけられるのだろうか。

 そうなると、あまりに未知の世界である左官については、子孫が大いに悩むかもしれない。というわけで、「目で見て盗む」=「本職だって口頭やらで説明しにくい」事に挑んでみる。これは、この家での祖先による子孫の為の左官施工論だ。

 

 素人お父さんの、素人なりに考える左官職の三大要素がある。「塗り」の技術力、「下地・現場毎」への対応力、「材」の配合経験値、これだ。まずは「塗り」から始めて、その他の事も書いていこう。

 

■「塗り」

 「塗り」という中にも要素は一つじゃない。「美しさ」は当然として、「堅固さ」が必須。これらを両立するのが左官職人、たぶん。

 

<「塗り」で目指す方向性>

○「堅固さ」

 いくら美しく塗れても、後日に壁が剥落しては全く意味を成さない。剥落しないような塗り方は特によく分からんが、普通に塗っていれば問題ないだろうと見越す。

 

○「美しさ」

 本施工は、次施工であり仕上げとなる漆喰の下地となる。これを前提に考えた。

 ・「斑」と「引きずり」

 壁に対して遥かに小さな鏝を用いて泥を塗る。施工中にも始めの方で塗った泥は固まり出す。となると、お父さんなら塗り斑が出てしまってもおかしくない。また、塗り厚によっては泥内の小石を鏝が引きずってしまい、壁表面に窪んだ線を引いてしまう。これら、壁表面の見た目の荒については目をつむる。次工程の漆喰塗りで隠れる、との算段から。

    f:id:kaokudensyou:20160516050556j:plain←小石を鏝で引きずり線状凹みな仕上げ

 

・「平面」と「むくり・しゃくり」

 伝統構法土壁の「美しさ」と言うと「斑なく平ら」が最低限だろうか、と思う。と言っても一筋縄ではいかない。面を平らに見えるようにする為、わざとむくらせる又はしゃくらせる技法があるらしい。ただただ平らにすると、人間の目の錯覚で平らに見えんらしい。薪ストーブ炉壁施工でも触れたが、この家でもしゃくった壁がある。一方、そうでいない壁もある。むくんでいても歪さがあったりする。

 

 

 「むくり」とかなんて難しそう。非土壁家屋では一様に平面。それで凹んだりしているようにお父さんには見えない。「むくり」とかじゃなくとも問題無いだろう、と「平面」をただただ目指す事にする。次工程の漆喰塗りでは調整出来ないだろうから、これに気合を入れる。