家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

原木は黒に、脳内は真っ白に

 ここ数ヶ月、左官とその関連施工に真っ最中。左官の事で頭が一杯。しかし、その他の事も並行して行われている。

  その一つ、階段束柱用の原木乾燥。これについては、並行と言ってもただ日陰の場所に置いておくだけ。たまに背割りに入れた楔に緩みが出てきたかどうか等の観察程度を要するぐらい。その観察と言っても、日常動線上に置いてあるので特段意識せずとも良い。脳の容量を使用しないような事柄。そう思っていた。

 

 しかし、原木の表面に予想外な状態が発生して来た。

 表面乾燥割れ軽減の為と塗った亜麻仁油。これは1ヶ月もしない内に乾燥。その後は屋外放置で埃等が若干付着。これらにより、当初の艶々感は見られなくなった。ここまでは何ら問題無い。その後に小さな黒い斑点が無数に現れる。愕然。愕然過ぎて、状態記録の為の写真撮影をする気が起きなかった。

 手で触ってみても落ちず、汚れではない。亜麻仁油を塗った事で、表面近くの乾燥を阻害しつつ黒カビを誘発した、と考えた。乾燥不良の木材を使用された住宅にカビが発生、という事がある。乾燥不良どころか、乾燥真っ只中でこれが起きるのかよ。

 

 途方に暮れかけたが、手を打たないといけない。そう思える程に気を取り直すのに要した期間、凡そ十日。

 酸素系漂白剤を試験塗布してみる。マシになったような、なっていないような。ならば、酢か、ミョウバンか。いずれにしても、表面の乾燥亜麻仁油塗膜の除去が必要かもしれない。どうやってするんだ。方法は分からんがとんでもなく面倒で大変だわ。

 手始めに、雑巾で強擦り。亜麻仁油は一回塗りだけなので、案外これでイケるかも。

 

 そう考えて試してみると、問題の黒斑点自体が取れる。おかしい。黒カビならば、表面を擦ったぐらいで取れるわけがない。いや、この黒斑点はカビだけども木にではなく亜麻仁油に発生したもの、なのかもしれない。何にせよ、光明。

 ただ、この強擦りは結構な強擦り。雑巾や布巾の絞りが甘いお母さん程度では無理。布巾を絞千切る程のお父さんで無いと出来ない。そのお父さんでも大変過ぎる面積。となると、樹皮の甘皮を剥ける程の能力を擁すアレ、高水圧洗浄機の再稼働だ。

 

 試してみると取れる。甘皮よりも取れにくいが何とかイケそうだ。という事でそのまま実行。

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 完全に取れない所もあったが、ほぼほぼ良くはなった。所要は凡そ4時間。

f:id:kaokudensyou:20160417090526j:plain←取れなかった所の一例

 

 木材乾燥なんて置いておくだけ、との考えは甘かった。

 つい先日、製材所さんから連絡アリ。数ヶ月前に製材済の胴縁材に黒い変色が起こっているがどうか、という念の為の確認内容。どんな具合か、元建築業界の人間であるお父さん、大体想像は付いたが別件もあって現物確認をしに行く。

 案の定の見た目。カビ発生材を壁内材として使うのはどうだろう、そう思って尋ねると、黒カビではなく木の「シブ」との事。話の内容からして漢字で書くと「渋」だろう。ビックリ。見た目だけで、その物自体の正体についてお父さんは知らなかった。

 

 原木の黒斑点は同じく「渋」なのかもしれない。「渋」は木材乾燥の玄人でもどうしようもない事っぽい。件の胴縁材と同じく天然乾燥させている原木材に、これが発生する事は自然の理なのか。しかし、床柱のような原木状態の化粧材で綺麗な材が数多存在する。きっと、化粧材用の何か方法や遣り方があったのかもしれない。たかが天然乾燥、と思いきや全くそうではなさそうだ。