家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

自己所有家屋だけども賃貸家屋のように住まう。これぞ「家屋伝承」

 養生の途中、以前の住人が不用意に貼り付けたシールを取り除き、改めて古色塗布。

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 何かの物を吊っておく為の引っ掛け具のシール跡。立派な梁にその引っ掛け具を貼ってしまう。一体何を考えてるんだ。いや、何も考えていないのだろう、ここに何かを吊りたいという事しか。

 

 家なんてものは、住み手にとっては道具であり消費財であり。そういう考え方がある事は承知。低レベルな思考だとか馬鹿な発想、だなんて事をお父さんは思わん。

 

 しかし、これが賃貸住居だとどうなるのか。

 賃貸人は、所有物件を極力良い状態で維持して、長く賃借人に貸していきたいと考えるのが普通。なので、現賃貸人へ綺麗にして返さないと敷金返金額を減額する。敷金は、賃借人にそれを強制させようとする意味合いがあるお金だ。なので、賃借人である住み手がまともな人なら、好き勝手に傷付けたり汚したりしない。自分の次の賃借人の事を気にしてでなく、自分の預けている敷金の額を気にしてだ。至って簡単な話。

 翻って、自己所有物件に自分で住むとなると自由だ。シール跡や柱に釘は勿論、漆喰壁に画鋲なんて事も気にしなくても良い。本人次第。

 

 だが、この家は違うぞ。ハッキリ言う。

 

「この家は自分の家であるが、自分だけの家でもない。」

 

 お父さんとお母さんの家でもあるが、死んだ後はきょうこかりょうすけのどちらかの家になる。そして、その後は孫の家であり、曾孫の家であり、と家屋の寿命を迎えるまで伝承すべき。この家は後世の子孫の物だと心得よ。

 

 と言って、お父さんが今から曾孫などにそれを求めても仕方がない。神仏も幽霊も信じないお父さんは、曾孫に説教する為に枕元に立つ事が出来る自信は無い。

 

 勿論、窮屈に暮らす事は現実的ではない。ただ、よく考えてみてごらん。世間に多くおられる賃借人の方々を見習う程の意識は持てるだろ。住居を賃借している方々は何も窮屈にそこに住んでおられるわけではないし、それよりは自由に使える。

 それに、シールを貼らないようにしたり、釘を打つ場所を考えてみたり等、特段苦も無く誰にだって出来る。自分はせずとも子供が漆喰壁に画鋲を刺して剥落した。ならば、その子供に補修させても良いじゃない。そういう事が出来る家だ。

 

 こういう事を書くお父さんは、範として当然ながら釘やら画鋲やらは安易に使わないよう工夫に努めるつもり。お父さんにとって問題なのは、将来の住まい手ではなく現住まい手のお母さんだが。