家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

養生も大事で立派な作業だから

 もしかしたらもしかすると、お父さんは生まれ持っての左官の天才かもしれない。今まで左官とは縁遠い所に居たから知る由も無かっただけで、左官業界を背負って立てる人間かもしれない。

 その検証。荒壁と中塗壁の中間工程、大斑直しを試験的に行ってみる。鏝板から鏝に土を取る鏝返し、上手く行かずポロポロ落としてしまう。木部もしっかり汚してしまう。う~ん、やはりただの凡人の素人。そういう事でマステ養生はやっぱり行う。

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 建築業界にちょっと身を置いた事がある程度だけど、玄人と素人の違いの一つに「養生」という工程があると思う。

 左官職は、床養生はしても恐らくマステ等の養生はしないはず。塗装職も全員が全員するわけではない。施工箇所や請負金額等に依る人もいれば、そもそも養生に頼らずとも施工が出来る腕前を持っている方がおられたり。

 と言って、養生される玄人の方がそれほどの腕前しか持っていない、という事では全くない。予算が少なくともしっかり養生される方もいる。状況やら条件やらで事前準備として必要とあらば養生されると思う。腕の確かな玄人の方は養生でさえも綺麗にこなされる。

 

 片や、素人なのに養生工程を省く方は結構おられるようだ。事前準備に対する姿勢の軽重、玄人と素人の違いの一つだとお父さんは思っている。腕前や経験が無いなら養生は特に必要だろう。

 

 そうは分かっていても養生は下準備の地味な作業。やっていて楽しさを見出す事はお父さんには出来ない。そもそも大した準備をしていなかった、重要と分かっているのに。

 備蓄マステは100m弱。ついで買いした物で必要量不足。初期段階で不足が分かり、目下の大斑直し箇所を前提にした養生を行う。マステ以外のビニール養生も含めると、これだけで半人工強だったように思う。キッチンと薪ストーブ廻り全部を行うと合計1人工だろうか。また、この箇所を基準に想像するに、マステ代の概算は母屋全体で一万円弱になりそう。人工だと6、7人工にはなるのだろうか。

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 これらは、あくまでマステだけの養生。これ以外にビニール養生やら床への養生も発生するだろう。これら養生を少しでも減らしたいと、高所から施工をしてきたし今後もそう。それでも、それなりのお金と時間を要する作業。それが養生、甘く見ちゃいかんと改めて実感。

 

 ちなみに、キッチン窓鴨居のチリ部分に複数の指跡がある。これはお母さんの指跡。マット感抑制の為の亜麻仁油塗布の際、塗布後にここを持ちながら他の場所の塗布等をしていたようだ。古色の塗り忘れもある。折角の綺麗にする作業なのに、見落として自分で汚したままで。うっかりなら分かるけど、こういう類が多過ぎてうっかり以外の何かがあるのか。

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 養生以前の問題だとお母さんに突っ込むと、自分でも信じられない、何故こういう事を色々してしまうのか分からない、との事。ある意味、謎多き女性。

 これを綺麗にするのは削る以外には思い浮かばず。見えない箇所だしそのまま捨て置く事にする。どの代がここをまじまじ見る事になるか分からないが、在りし日のまだ若かった奮闘する先祖の痕跡、として優しく見てほしい。