家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

お父さんは一応理系だけども・・・

 小壁残しの為の柱部分残し。これの何を難しいと言っているのか。

 柱の下部を撤去すると、低温炭化を待たずして柱と小壁が落ちてくる。では、柱を吊ればいい。その方法として、在来工法の同義語である短寿命建築物ならば金物で吊る。金物の寿命の前に、家屋そのものがどうせ解体されるから深く考えなくて良い。一次方程式並みの至って簡単な話。

 

 しかし、伝統構法においては同義語である長寿命という要素がある。伝統構法の美もある。伝統構法の揺れ方もある。金物と木材の素材差と寿命差を、将来の棲み手である子孫が気に掛けられるだろうか。もし金物を隠すような細工にでもしてしまったら非対応間違いない。そもそも、金物が木材のような柔軟な動きをしてくれない。揺れた事で曲がった後に周囲の木材が元に戻る動きをするならば、それによって金属疲労を起こして割れる事はないだろうか。

 複次方程式を含んだ定積分による関数と微分素数や実数を因数分解で、とかとかのチンプンカンプンな話。この他にも古文や歴史や物理や外国語等の勉強に部活まであるんだから、学校出てから数十年のお父さんには過酷な苦行。

 

 この事から平静さを無くしたお父さんは、「やりながら考える」荒業方式にて施工着手。

 一応、方法は考えてはいた。部分残し柱は吊柱として、キッチンと薪ストーブの間に位置する柱を支持柱として、片持ち梁方式でやってみようと。支持柱側に貫通穴を開け、そこに新たな梁を入れてクサビ留めをする。片持ち梁、伝統構法で言うならば母屋大屋根の軒を支える肘木だろうか。そのような感じで成立するんじゃないか、と。

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 新たな材料として、母屋一階トイレ床梁材と同時に大引を製材して置いておいた。これを鉋掛けしていざ刻もうとした時、急に不安に襲われる。本当に大丈夫なのだろうか。支持柱は目測4寸角材。これに梁を水平に差し込みクサビで留めた程度で、水平距離750㎜程離れた吊柱と重たい土小壁を維持出来るものだろうか。揺れた時でも維持出来るレベルなのか。よくよく考えるとどうにも怪しいぞ。

 

 吊柱上部と下部にそれぞれ一本。いやいやいやいや、何の解決にもならん。

 ならば、二階床梁との間に吊束を設けて上部梁自体を吊るす。これなら大いに有効そうだ。いやいやいやいや、二階床梁と吊柱とは水平方向でズレがあったではないか。だから土壁が傾斜だったんだろうが。

 ここで施工中止。「やりながら考える」方式はやはりお父さんには向いていない。知識も経験も不足している人間には、と言う方が正確だろうか。いずれにしろ、現場事務所に籠って構造を改めて考える事にする。