家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

「木」+「反る」=「板」

 薪ストーブ周辺土壁の解体工事をしていた頃の晩、ふと思い浮かぶ。接ぎ板は大丈夫だろうか、と。

 「木」に「反る」と書いて「板」。板は反る。一枚物ではなく接ぎ板と言っても同様のようで、対策を施しておかないといけない。それをすっかり忘れていた。脳内切替スイッチの錆付きを感じながら、解体工事から本工事初の木工作業へ転換。

 

 板の状態を見る。すると、反っている。見事に思いっきり反っている。5万円以上の板が反っている。あぁ、愕然。

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 またいつか反り直ってくる事を祈って、それを踏まえた準備を行う事にする。

 無垢材板の反り防止の方法は、反り方向に直交させての材を取り付ける。板裏に角材をビス打ちする事はした事がある。初歩的な加工法だ。無垢木材の玄関扉にボルトを通す、というものを見た事がある。テーブル天板も同様の仕様を見た事がある。

 

 お父さんが行う事とした方法は、昔ながらの方法らしい桟入れ。桟と言っても蟻桟。しかも、締まり勾配で。

 蟻桟とは逆勾配が付いた桟。締まり勾配とは、桟やその桟を入れる材の溝を真っすぐにするのではなく、緩やかに角度を付ける。これにより、桟の板材の溝に入れていく程キツクなっていく。

 

 この目的は、金物を使わずに板材と桟材をガッチリ固着させる為のようだ。金物を使ってガチガチに桟と材を留めてしまうと、材の収縮によりそれ自体に割れが発生する恐れがある。ある程度、材が動けるようにしてあげる必要があるそうで。

 と言って、桟が緩いのでは意味をなさない。きつく材に桟を入れないといけないが、きついと入らない。そこで、締まり勾配という桟と溝の先を微妙に細める加工を施す。これにより、途中までは手でも入るが、入ってしまうと金槌で叩いても容易に外せなくなるそうだ。

 ガチガチだけども遊びがある、と何とも二律背反的な加工。これが「締まり勾配の蟻桟」らしい。

 

 文字で書いても分かりづらいかもしれない。そもそもお父さん自身、未だに頭を抱えている。

 大工さんが造作家具にこれを施し、又は締まり勾配を施さず真っすぐキツキツにした桟と溝を施し、金槌かで叩き入れる内容があった。一方で、家具職人らしき人によると金槌で入るようでは緩いらしい。

 大工職人と家具職人。軍配は後者。なのだが、家具職人と一言に言っても、これまた一律ではないから困った。締まり勾配以外を採用される方とそれを批判する方、治具さえ創れば簡単という方や兎にも角にも難しいという方。よく分からん、という事だけはお父さんにも分かる。