家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

キッチン天板発注:先輩のお土産続編

 天板材種が決まった後に訪れた長野の古民家先輩の現場。思わぬお土産話を幾つか貰ったが、現時点で良くも悪くも結果的に強烈になっているのは「漆」を建材として使うお話。先輩は断念されたのだが、一部かの床板に使用する事を検討されたらしい。漆と言えば食器や小物に施すもの、その程度の認識しかなかったお父さんはそのお話を聞いて少々驚いた。

 

 が、よくよく振り返ってみると目にはしていた。

 スイッチプレートに漆を施した製品がある。真鍮の台に黒と赤の漆が塗られているのだ。用事のついでに実物を見に行ったがなかなかの高級感。お値段も高級で一つ3万円だったか。プラスチック製の大手メーカー普及品だと100円ちょっとのものがだ。一ヶ所、二ヶ所だけ、とか考えてみたが恐らく採用しない(出来ない)と思う。

 それと恐らくもう一つ、この家の元床の間にあった框や海老束。外した框の断面を見た際、内部は正真正銘の木だが表面層が木では無く樹脂っぽいものが。海老束を鋸で切断した際には切り屑にも、プラスチックというか樹脂というかのような見た目。昭和前期築のこの家に何故こんなまがい物が、と思ったのだが。これが歴史的正真正銘の天然樹脂、英語でJapanとも呼ばれる漆だったのかもしれない。

 

 実際、日本人のくせしてお父さんが不見識なだけで漆の用途は結構あるようで。食器や小物以外に代表的なものだと家具だろうか。

 そもそも建材の一つである建具もそうだし。これを書いている数年前、日光東照宮の大規模修繕が行われていた際には、国産漆が品薄になっていたようだ。立派な寺社仏閣にはふんだんに使われているのかもしれない。

 個人邸にも柱や梁に施しておられる事例があった。柱や梁がピカピカツルツルながら重厚感たっぷりだ。趣味嗜好に依るのだろうが、その写真を見てお父さんは感嘆した。ただ、その施主の方は予算たっぷりのお金持ちに違いない。この家では無理。

 

 さて、この漆話と天板材の二点がある日繋がった。

 国内流通のほとんどを占めるのは支那製漆。これに対して希少な国産漆は非常に硬く刃が立たないらしい。支那製が劣る、とかではなくそれぞれの特性。ならば、国産漆だと鍋底の角がコツンと当たったりしても大丈夫ではなかろうか。そもそも漆は水に強い。適度に湿っている方がむしろ良いとか。酸にもアルカリにも強い。キッチン天板としての実用塗料になり得るんじゃないか。キッチン天板が漆仕上げ。想像するだけでゾクゾクする。

 

 こうなると杉集成材ではなく、硬くて木目が良い板の検討を行う。その結果、タモの接ぎ板。漆仕上げの基材だと他にケヤキなんかもあるけども、タモの方が財布に優しそう。

 この施工が成功している場合は二人の目の前に実物があるはず。なので接ぎ板とはどんなものかは割愛する。接ぎ板にした理由は、集成材だと継ぎ目が多く漆仕上げの基材にはイマイチ、一枚板は高額過ぎるかそもそも流通していないからだ。

 

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