家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

土を漉す

 「土を漉す」。なんじゃそりゃ。料理で食材を漉す工程は知っている。砂を篩にかけるという事は知っている。しかし、「土を漉す」だなんて。

 平成の世で一体どれほどの人がするんだ。土壁を造る人だけだろうか。「一、二、三…」と数えられるぐらいしかおられないかも。いや、土壁施工者全員がこの工程を経ていないかもしれない。唯一の情報源のインターネット上では、土壁についての記載で漉す事にほぼ触れらていない。この工程の存在をお父さんに知らしめた、どこかの施主の方がご家族で行われた一件のみ。

 

 特殊事情で行われただけで普通は行わない、かと思いきやこの家でも必要だと確定したので行わざるを得ない。一応、数ヶ月前から心と物の準備だけはしていた。床下通風口用の金網を、篩用としても兼用しようと先んじて購入していたのだ。通風量確保と錆対策として5mmのステンレス網。

 ステンレスは良いとして5mmはどうしたものか。このサイズの網だと3mm程度の小石は通してしまうんじゃないか、と直前になって躊躇してしまう。大斑直しや中塗り厚の薄い所だと、足してようやく5mmとかになりそう。3mm小石は結構な支障になるはずだ。

 

 そんな事から急遽、丸い普通の3mm篩に変更。前住人の置き土産。荒土プールに馬二台を投入。これに篩を乗せ、水をかけながら手漉ししていく。家族総出。と言っても、りょうすけは泥遊びしていただけだけで全身泥まみれ。お母さんやきょうこ、それにお父さんで試行錯誤しながら漉していく。

 

 3mm篩ともなると薄塗り対応面から間違いないだろう。しかし、漉し作業は大変だろう。と案の定、水と手で地道に漉していかなければいけない。避けたかった先人の施主ご家族と同じパターン。

 小石等は勿論、粘土自体が分解されていく。藁繊維は分離。篩を通った砂は篩直下に堆積。この細かな砂は堆積する事でカチンコチン。馬の脚を固めてしまう。粘土は粒子となり水に浮遊してからゆっくり堆積。その堆積のゆるさは、とても粘土状に再帰するとは思えない不安さを感じる程。

 その不安さからと単純にプールから溢れそうになる事で、溜まっていく水を放出したくなる。しかし、この水はただの泥水ではない。土壁構成材の一つ、リグニンの水溶液のはず。短絡的に放出しては元も子もない。でも、水をかけていかないと篩内の荒土は漉せない。そこで考えたのは溜まった水をバケツで再投入。これにより水問題は解決して作業進行。

 

 そんなこんなで悪戦苦闘しつつ丸一日でほぼ完了。およそ二人工。一人でやるとそれ以上かかったのは確実。これならば中塗り用に土を買っても良かったかも、とお母さんと話していた。この家の分なら、配送込で二万円辺りで買えるかと思う。本職等のサイトでは土漉し作業が紹介されているものが見当たらなかった為、購入土は漉す必要が無いと思っていたのだ。

 しかし後日、購入土を使っておられる古民家先輩の現場でも、漉し作業が助っ人の方により行われていたとの内容が掲載される。我が家含めて三件目の事例。塗り厚確保寸法に由ると思うが、買っていてもやらなければいけない苦行作業のようだ。

 

 それから二週間程。他作業の傍ら、排除物側に混じった藁繊維や粘土粒子を取り出し、荒土プールに再投入。この作業は総計一人工弱か。時間の経過と共に泥水の再帰は無事なされ、荒土からキメが細かい藁繊維と砂入りリグニン粘土となった。

 

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