家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

荒土の柔らかさ

 左官職は、綺麗にだとか、平らにだとか、早くだとかの「塗り」が腕の見せ所、とお父さんは思っていた。しかし、それは素人でも見えるに過ぎない一面のようだ。同様に、もしかしたらそれ以上に技量が求められるのは、「材料調配合」らしい。一流ともなると、建材として売られているものに限らないで、自然にある土や砂から吟味して材料にする方もおられるようで。

 以前にも述べたが、「黒漆喰」を扱える左官職も少なくなっているらしい。漆喰の主原料の石灰は白色。これに松墨かを混ぜたりする事で黒漆喰を左官職本人が作られていたらしい。石灰と墨を混ぜても水彩絵具のようにはならない。受け売り内容をここに書いても仕方がないので割愛するが、とにかく難しいようだ。まさに職人の世界。

 

 そういう事もあり、塗りだけじゃなく荒土具合の事についても。結論から言えば、人それぞれで好みの問題、自分でやってみて良い感じの具合。それを踏まえて、経験塗り坪数6坪程度のお父さんの知る限りの所見を書いておこう。

 

 古民家先輩の現場では硬めだった。先輩も試行錯誤された上で出された答えだ。その硬さは、トロ舟に藁を加えて鍬等でそれなりにはかき混ざられるが、という具合。泥団子を作ったとしたら、結構綺麗に出来そうな感じだろうか。

 何故硬めにされたのか。その方が先輩はやりやすいから、だったと思う。柔らか過ぎると竹木舞から土がはみ出し過ぎてしまう事もあるかもしれない。実際に、先輩の現場作業時に柔らかめにされた土は裏からベロンと出ていたり。

 

 ただ、この柔らかめにされた土。先輩に時には内緒で、時には堂々と意図的にしたものだ。と言うと悪意あるように聞こえてしまうが、そういうつもりではない。若き先輩と違って、硬い土はやりづらかったのだ。

 まず塗り前の藁と混ぜる作業がしづらい。それに竹木舞に押し付けるのがしんどい。一応男のお父さんでもそうなのだから、女性参加者の塗った裏面の土の出は弱かったりしていた。その為、先輩基準より水を多めにしたのだ。一部それがちょっと多すぎたと思われ、ベロンとしていた。

 

 中年のお父さんの場合は非硬め。泥団子を容易に作れるが、表面は水気がありベチャベチャ感は少々ある程度。

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 理由は先述の通り。混ぜやすいし、押付けも楽。それともう一つ。硬めだと、竹木舞から出た土を裏撫でする事で塗り面に押し戻しがあり凸凹していたのだ。乾燥が進んでいた箇所は勿論、そうでもない箇所でも。これを避けたかった。

 

 その分、含水量は増える。乾燥すると収縮が大きくなり、よってヒビが深くなるかもしれない。そもそも新しい荒土自体が、古いものと比べるとそれが顕著らしい。なので、新しいものに古いものを入れて使う事が常套らしい。

 この施工では新たに購入せず既存の土のみを使う。この事もあって、微妙に水が多くとも問題無しと判断した。結果、問題無しだったと思う。ま、好みの問題としていいんじゃないかな。

 

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