家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

先祖が行う「後入れホゾ留め」解説

 さて、「後入れホゾ留め」の説明をしておこう。これも例のごとく解体を前提にした加工なのだ。

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 雇ってきた平板はカシ材。これを、敷居材の切り欠いた面からスライドさせて、グイっと柱ホゾ穴部に差し込む。玄翁等で叩き込めない箇所であり、取り外しも出来るようにしたかったので、工具を当てがっての手力だけだ。この時点では、柱と敷居は全く結合されていない状態。敷居が動いてしまう。

 

 そこで次に、カシ平板と敷居をかしめるカシ部材を入れる。「留めクサビ」と名付けておこう。この留めクサビの敷居差込箇所は、斜めかつキツめ加工をしておいた。これにより、留めクサビは重力方向に強固に留る。カシ平板との接合部分には、カシ平板を受ける細工を。この前加工の上、やはり棒状工具をかましてグイっと柱とカシ平板方向へスライドさせて差し込む。結果、敷居はグラつかずの微動だにせず。

 

 この留めクサビ。土壁に埋もれるので見えなくなる。それに、敷居材を撤去する際には鋸で切断すれば簡単だ。そもそも、カシ平板と敷居をビス留めすれば不要の材。

 

 そんなこたぁ馬鹿でも分かる。そこまでビス使用を避けたいわけでもない。でも、留ればそれで良し、だけでは詰まらないじゃないか。人が感動する起点は、目的や用途を満たしただけの所から外れた箇所や物に多くないかえ。家や道具を問わず職人の仕事ぶりで言うならば、一段階超えた域の仕上がりや細工、使い勝手に触れた時だろう? 

 

 在来工法で永くとも二人の代で終わる家ならこういう事を行わない。しかし、これが当分会えない孫が、会う事は出来ない曾孫等の子孫がもし見る事になるとしたら。職人レベルではないお粗末施工ながらも、素人の先祖が変わった事を、面白い事を、楽しんでいる事をしている、等と思わせられたら。お父さんがその立場なら、会った事がない先祖に想いを馳せつつ自分の生を感じて嬉しくなると思う。

 

 わざわざこういう事を考えて施工をしたのは、そういう欲からなのだ。これに比して、柱の根継ぎをせずだった事もある上、この遠回りでの約二時間の費やしは安上がりだったと思っている。 

 

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