家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

焦げた柱

建材の乾燥方法も色々ある。材木の乾燥もなかなか奥が深そうだ。この家に住む者として知っておいて損はない。


 乾燥方法によって材木は、グリーン材、天然乾燥(天乾)材、そして人工乾燥(人乾)材とに分類される。


 グリーン材。生材だ。丸太を製材して何の乾燥工程も行っていない、含水バリバリな材木。

昔は、これを現場に前もって積んで天然乾燥させる事もあったそうで。壁土と同じく昨今は一般的でない。余裕ある敷地と腕のある大工職人が揃わないと建材として使えないだろう。乾燥と共に、材がうねったりするのだ。なので、グリーン材を構造材や化粧材として使われる事は、よほど悪質か無知な施工者でない限り恐らくないはずだ。


 天乾材は、昔ながらの自然頼りの乾燥方法。荒製材した材を積み上げて長期間保管しておく。最低半年ほど。これにより、木の細胞は破壊されず含油も維持される。強くて美しい建材になる、らしい。

しかし、如何せん時間がかかる。敷地を長期間占有、在庫保有も長期化。割れなども出やすいらしい。製材所経営に影響してしまうのだ。天乾を実施している製材所は稀有だ。おそらく揺るぎない信念をお持ちの所に違いない。

 一般的なのは人乾だ。石油や電気などで強制的に乾燥させるのだ。在庫や材の質が天乾よりもコントロールしやすいのだろう。この人乾の中でも、低温、中温、高温と分かれるらしい。大体、低温で
30℃~45℃ぐらい、中温で60℃ぐらい、高温だと100℃だったりするらしい。

 低温乾燥は、天乾に近い乾燥法で材の持つ素材など極力維持する目的で行われるらしい。人乾と天乾の良いとこどり、という具合か。しかし、やはり時間がかかるそう。ネット検索では製材所によって、最低が1週間、最高は
2週間の記述があった。

そういう事で一般的なのは中温乾燥のようだ。自然界では無い温度設定となり、天乾や低温乾燥よりも材木は変化するらしい。しかし、これならば在庫や品質管理もしやすく、需要者である工務店等からの要求にも応えやすいのだろう。大工職人や大工さん等だと分かるかもしれないが、大工作業員やお父さんのような一般人にはどうせ違いが分からない。

 そして高温乾燥。この方法だと、全部が全部じゃないかもしれないが、乾燥機の扉を開けると煙が出て焦げ臭かったりするらしい。木材が低温炭化しているのだろう。実際に、木材の外部か内部かが黒くなっていたりするらしい。

これまた、どうせ施主は分からない。在来工法家屋の中でも、安さと短工期を売りにしているものはほぼ大壁仕様だ。柱などが表に現れない。どんな木材を使っていても施主にはバレない。それで経費が浮いて自社の懐に入れてもバレない。施工中の中間検査などでもきっとバレない。解体時にももちろんバレない。地震で倒壊した時も、これが原因の一つだったとしても恐らくバレない。そもそも「高温乾燥木材はダメ」だなんて決まってないしぃ~、てなもんか。

 一般的在来工法家屋に占める材木代は
10%台に過ぎなかったと思う。ちょっと良い材木を使うように、さらに言うなら基礎コンクリートをちょっと厚くするように指示しても、全体費用からすれば3%も掛からないのではなかったかと記憶している。上物2千万円なら60万円以下だ。最新電脳設備をあれこれ考えるぐらいならここにカネを掛けるか考える方が有意義、と新築検討時のお父さんは考えていた。
 新築家屋は「買う」のではない。施主が造るように発注して「建てさせる」のだ。施主が10代なら同情するが、大の大人が世の中甘く考えていても同情出来ない。焦げた柱を使われても無知で不勉強な施主が悪い。