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家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

祝!荒壁土が臭くなる

 荒壁土の確保には目途がついたものの、復活建材として昇華する目途がつかない日々が続いていた。

 荒壁用の粘土に藁を混入させて、水に浸して寝かしておく。すると、藁が腐って臭くなる。

 この知識のみで荒壁土づくりに挑んでいたお父さん。以前にも書いたが、藁の強い匂いはするものの、これが果たして「臭い」と言えるものだろうか。頼みのネット検索では有用な情報が得られない。

 藁が腐るのは、藁自体に付着している菌が原因ではないか、と考えていた。藁は腐りやすい、というのは無農薬藁を譲って下さった里山保全活動団体の会長からは聞いていた。古畳を雨ざらしにして堆肥にする、というような事も聞いた事がある。それに納豆菌の事。これらから、空気中の菌と言うよりも藁固有の菌があるのではないか、この為に腐敗が避けられないのはないか、と何となく。そこで、水にさえ浸しておけば順調に腐っていってくれるもの、とこれまた何となく思っていた。


 しかし変化がない。「藁がすぐに溶ける」との表現を目にしていたが、しっかり藁は残っている。元々混入されていた藁の量がそれなりにある。お父さんが指南書としていたネットの内容では、徐々に投入していく記載があった。混入量は、おそらく最終的な量に近そうに思われる。

 もしや量が多すぎて酸欠状態なのかもしれない。という事で頻繁に捏ねくり返していた。なんなら、素手で全部をコネコネしてみたり。ほぼ毎日観察していた。しかし、どうにも変化しない。

 何かで目にした内容で、古い藁でも水に浸けると菌が復活して発酵するというものがあった。そして、徐々に投入。これらにより、新しい藁は初期に気持ち程度しか入れていなかった。しかし、変化が現れない事で不安になっていた。そこに、おじいちゃん建築士の「新しい藁を入れないとダメでしょう」と笑いながら言われた。詳しくなさそうで信用をあまりしなくなっていたお父さんだが、不安感から藁をもすがる想いで実行してみた。しかし変わらない。激しく後悔。
 もし、このまま腐ってくれなければ、その後の工程にどんな支障をきたすのか読めない。自然任せで答えが分からないこの荒壁土づくり。他の並行作業や検討課題にあたりながらも、ずっと頭から土の事が離れない日々を過ごしていた。

 しかし、その時はやってきた。時は3月。気温が
20度近くなる日が出てきた頃。ほぼ毎日観察していた荒壁土プールから、少し気泡が出ている事を発見した。

 防水ブルーシートの底に穴が開き水が徐々に漏れていても、気泡など出るのか。考えられるとしたら、虫か何かが棲んでいるか。手を突っ込んで探してみる。が、見つからない。

 それよりも土の色の変化がはっきり見える。濡れた土色から、水を混ぜたセメントのような濃いグレー色になっていた。その気泡が出ていた土を匂ってみる。ほのかに臭い。今までのような藁臭い、とかではない。まさにヘドロの臭いだ。「人によっては臭くない」とか「慣れて臭く感じない」とかではなく、誰しもがいつ何時も「臭い」と思うはずの臭さだ。気泡は、腐敗に伴うメタンか何かか。

 温度の事は盲点だった。やはり新しい藁不足が原因だとかではなかったのではないか。
2ヶ月間程、ずっと抱いていた不安感は払拭され安堵した。臭いには臭いのだが、待ち焦がれていたこの臭さに嫌さは感じず、しばらく嗅ぎまくっていた。

 

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