家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

屋根補修工事の施主施工の選択肢

 お父さんの答えは新たに産まれたもう一つの選択肢、「自分でやる」だ。将来的には依頼するかもしれないが、施主施工で急場を凌ごうと。


 二社の業者氏には、無知なお父さんからすると非常に有難い事を教えてもらった。

 一つは、屋根の漆喰が後から上塗りされている事。軒先や横端部(ケラバ)や壁との取合い部、棟等の部材は「役物」と言う。それに対し、平らな部分は平物、平板、瓦で言えば平瓦と言う。瓦屋根だとこの役物である役瓦と平瓦との取合い部には、葺土の上に漆喰が施されている。この漆喰が上塗りされている事で、瓦とのチリが少なくなって水が切れにくい、要は雨が入りやすくなっていると。

f:id:kaokudensyou:20150815222155j:plain←こうより…

f:id:kaokudensyou:20150815222204j:plain←こう。分かる?

 もう一つは、雨漏り箇所が平瓦であれば、瓦を外し隙間の堆積物を掃除するだけで雨漏りが収まる事がある、と。

 以前の職により、お父さんは素人よりは屋根施工について多少は知っていると思う。しかし、瓦屋根については無知。その無知さが故に、土葺瓦屋根は自分で瓦交換できると認識していたにも関わらず、瓦屋根に手を出す事は恐れ多いと捉えていたのだ。とてもじゃないが自分の範疇ではない。素人の自分が何かを行うという発想が皆無。

 それが、意外に簡単であったり、理屈が分かったりした途端に心理状態は一変した。まるで、自分の手中に収まったような感覚とでも言うのだろうか。昔は神仏や自然に畏怖の念を抱いていたのに、科学技術が発達して自然を制覇した感を持っている現代人のような感じか。

 

 自己範疇に収まったと感じると、何故1年間も雨漏りを放置していたのだろう、と自戒し始めた。改修工事の時に一緒にどうせやってもらうから、と。おかしな理屈だ。完全無知な素人の家主の中にも、ちゃんと対応される方はおられるのに。

 一般的家主の多くの人よりも、どちらかと言うと家の維持について意識が高いと自認していたお父さん。自分はよく見ていてよく考えている、と。驕っていた。気付いていなかった。屋根だけでなく、目に見えている雨漏りにさえ意識がかなり低かった事を初めて自覚した。

 恐らくなのだが、よく分からない事に対して思考停止していたように思う。思考が停止しているものだから、危機意識が湧かない。自分に足りない所がある事にも気付かない。

と言って、瓦屋根補修の施主施工をぶち上げるお父さん。今までとは逆の面で無知無謀、かつ不足を知らないのかもしれないけども…