家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

施主の熱い想いが歴史を紡ぐ

二社共、既存瓦を使うのは却って無駄だという姿勢。その時にこう思いました、お父さんは。

 お父さんが以前の職の一つの職務として、図面一式から材料の拾い出しをしていた。それを上司に提出。するとその上司は、各項目に対して一定の掛け率を設定。その合計額からさらなる掛け率を用いて諸経費を算出。それら総額を微調整して見積額としていた。

まぁ、材料から人工代だけでなく利益を乗せていたわけだな。見積提出者としてはその仔細内容を読み取られないようにして、発注者からの値下げ要求に抗するわけでんな。

 なのにお父さんときたら、材料を継続利用をと言うわけだ。そうなると、施工者の人工代と会社の利益が丸裸になる。見積提出者としては嫌なのかもしれない。だが、今時こういう業者はどうなのか。見積内訳はその気になったら、大体読み取れるご時世かと思うのだが。そもそも一般客で、人工代や会社の利益を負担したくないと無茶な値切りをする輩はいるのだろうか。どうせ一見客だ、もしそういう要求をされてから断ればよいじゃないか。最初から疑われるのは心外だ。

と言うか、これはそもそも的外れな受け取り方で、単純に面倒臭いと思ったのだろうか。だとしても、その面倒臭い作業を自分でするわけじゃない上、費用は施主負担なのだからいいじゃない。

 飛鳥時代の現役瓦は、奈良にある元興寺というお寺に葺かれている。歴史あるお寺だけに、住職や檀家さんはもちろんの事、施工者でさえこの瓦を残そうという心理が働いても想像に難くない。しかし、一件の民家に至っては家主の熱い想いだけ。古い瓦を継続利用して葺替え工事をしてくれる施工者はいているようなのだが、施主である家主さんの強い意向があっての事だと思う。

 他県業者氏から聞いた話で、防水紙であるアスファルトルーフィングのような通気性がないものは使いたくはない、という施主がおられたそうだ。結局、野地板に直接葺土を施しての瓦葺きになったそうだ。何とも熱い施主さんだ。

 その施主さんを見習えと、防水材を探してみると「コロシート」というものが見つかった。昔からの皮ではなく実、要は木板を使って紡ぎシート状した製品だ。東の方では使われているようだが、西では馴染みがないそうで他県業者氏も使っていないと。お父さんが直接メーカーに問い合わせても無反応。建材屋さんは施工業者だけ客と見ているのだろうか、個人の施主からの問い合わせに無視する所が結構多い。お父さんの熱意が足りないだけなのか?

 土葺工法の事だけでなく古い瓦を継続使用、杉皮かせめてコロシートも使用。そんな、施主の金を使って後世に残る仕事をしようという野心的な業者に押されれば、お父さんは数百万円の予算オーバーも辞さなかったかもしれない。しかしそうではなかった。そういう業者を探す気も湧かない。やはりまだまだ熱意が足りないのか、別の熱意が高まってきたのか。お父さんには他の選択肢が浮かんできた。