家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

重たい屋根の常識、非常識

ようやく屋根について語られる段階に来た。この時を待っていた。お父さんがこの記録を二人に文章で残したいと直接的に強く想ったのは、樋も含めた屋根についての事柄からだ。そういう事もあり、この話は非常に長くなる事を覚悟して欲しい。



 大別するならまずは一つ目、土葺瓦屋根の建物にとっての重要度と奥深さに比べてあまりに無知だった事を述べたい。

 あるテレビ番組で、司会者のアナウンサーが「皮膚にも菌はたくさんいるんですよ」と発言されていた。それに対してある芸能人が、「ええぇぇ~」と汚いものが付いているかのように自分の腕を拭うような仕草をしていた。

お父さんはこの芸能人が冗談で反応しているかと一瞬思ったが、その芸能人の普段の発言からして本気だと感じた。有用な菌がある事で皮膚は保たれていて、無菌であれば砂漠のごとくカサカサだ。その芸能人は子だくさんの母親だけに、他人事ながら少し心配する。

しかし、この芸能人に限らず、「無菌・殺菌・抗菌」などの商品のCMが山ほど流れている平成のご時世、同じように思っている人は意外にいるのかもしれない。公衆衛生観念が乏しい時代から、いつの間にか偏り行き過ぎてしまっているのではなかろうか。

 風邪をひくのはウイルスが原因と学んだ事がある。特別な教育を受けていなくても周知の事実のごとく認知されているかと思っていた。しかし、風邪をひいたら抗生物質を服用する人がいる。お母さんだけかと思いきやそうでもないらしい。抗生物質は菌への薬でありウイルスには効かない。無駄な薬は当然ながら、高齢になっていざと言う時に効かないのは嫌だから、多少の病気では有効な薬でも服さない。


 実しやかに言われている事が間違っている。これは結構ある話のようだ。ある芸能人やお母さんだけでなく、お父さんだって噂に惑わされて間違った認識をしている事があるだろうし、事実あったりする。
 家の話で言うと、「屋根が重たい事はいけない事」だ。これは事実であり、事実ではないそうだ。

 事実というのは、一般的な3寸や4寸の細い柱の在来工法においては、だ。

 一般的木造住宅は、耐荷重許容度は3倍近いという文章を目にした事がある。普通に造れば、自重の3倍程度は耐えられるらしい。だが、地震という外力が加わる事により、重たい屋根を抱えているとこの許容幅を一気に埋めてしまうのかもしれない。

 事実でないというのは、太い材による伝統構法家屋においては重たい屋根の方が有用、という説がある事だ。

 伝統構法の地震への対し方は、2階の既設筋交についての話で「免震・減震・吸震」として既に述べた。お父さんの解釈だと、これにさらに加わるのが「制震」だ。弱めの地震に対しては、重たい屋根によってそれをある程度押さえるとの事。例えば、モーターが内臓されている小さな機械を、手で押さえつけると震動が弱くなる。この現象と同じなのかもしれない。

 この事は他の人には言わない方が良い。少数意見であり、非常識の変人扱いされるのがオチだ。周りには細い柱の在来工法居住者の方がほとんど。その方達にとっては「軽い屋根」が正解だ。

 要は、軽いも重たいもどちらも間違っておらず、ただ単にその下にある建物に適しているかどうかだ。