家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

昭和の棟梁の心、平成の棟梁知らず

 しかし、しかしだ。在来工法や伝統構法の耐震力や構造の作用というのは、数百mの建物を構築できる21世紀初頭の現在でも、実はよく分かっていないように思われる。学者さんなどが研究し、実物大の建物を揺らして実験したりされているが、それでもだ。在来工法が潰れて伝統構法が潰れない実験結果があるが、その実験家屋設計者など実験者達の何かしらの意図もちょいと入っているかもしれない。

実の所、経験則に依存して建てられていると思う。主流の在来工法においては歴史が浅い事もあるのだろう、実際の大地震による被害を受けての事後対応で進化している。数多くの地震による犠牲者の存在によって成り立っているのだ。伝統構法はその点、歴史が長く在来工法の比ではない実績がある。その分、犠牲者も在来工法の比ではないかもしれないが。

 さて、伝統構法のこの家の斜め材は、どう見ても、どこから見ても、何回見ても筋交に見える。謎だ。

さらに謎なのは、この材の入り方だ。筋交端部の柱と梁の間に、また別の柱を切欠いて跨っている。これで横方向の力が働いた際、どう作用するのだろうか。分からん。内壁が少ない2階全体の捻じれを抑えているのか。いや、それは外壁である土壁内の貫で十分だと思うが。一体、何目的の筋交なのか。やはり経験則、というか当時の棟梁の「入れておくか」的感覚なのか。
 ただし、一か所、長いボルトが埋められている。どうも上下の梁同士を緊結しているっぽいのだ。経験則ではなく筋交による突き上げ力への対策なのだろうか。いやいや、では何故他の筋交箇所にはボルトがないのだ。う~む、謎だ。

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 こういう時の為のおじいちゃん建築士。曰く、「筋交として意味ないんじゃないでしょうか」。逃亡する前の逃亡社長と無垢板破壊棟梁も同意見。これに伝統構法の筋交使用厳禁論も手伝い、撤去決定。ただ、それなりの太さの筋交材に
5寸などのゴツイ釘が打たれていて、これを抜くのに難儀。全て撤去するのに1.5人工ほどかかっただろうか。

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 他に、フローリング板や棚が一壁全面に設けられていたものを解体したり、廃材や再利用材全ての搬出を入れると
1415人工ほどにはなったと思う。