家屋伝承

我が子たちに伝えておきたい、伝統構法の我が家のこと。

お父さん、死の恐怖を味わう

刃が進み大木が傾き始めた。順調かつ完遂だ。
 と思った瞬間、大木の幹の中心が裂けだして大きな幹が大きく跳ねた。「死ぬっ!!」と瞬時に頭を過ぎった近接位置のお父さんは、樹木の反対側に離れようとしたがそちらは山側で駆け上がれず後ろに倒れただけ。「会長は!?」と最も危ない位置にいた会長の姿を遅れて探したが、無事と確認。大木は、割れた幹から大量の水を大きな音を出して放出しながら倒れていた。

「ヤバいヤバいヤバい、マジでヤバいヤバい…」。大丈夫でした、と周囲の先輩に苦笑いをしながら述べるのとは裏腹に、お父さんの脳内は恐怖心一色。

 お父さんの薪調達の想定手段の一つが「自己伐倒」。自分で山に入り、自分で樹木を伐倒する。他にも、林業者や造園業者などから、既に伐倒済の樹木を頂く優良方法もあるそうだが、相手の都合もあるのでこれ一本に頼られないと思っていたからだ。
 しかし、幾度の経験を重ねられたはずの会長でさえこの具合だと、果たしてお父さんに出来るのだろうか。伐倒したコナラの後処理をしながら、頭は不安な想いで占めていた。

 そこからは、「伐倒作業」について机にかじりついてネット検索。出るわ、出るわ、惨劇写真付きの事故事例。事故数は建築業界が最多だが、比べて従事者がかなり少ない林業業界は割合で言うと最多。薪ストーブで一家団欒、など悠長な事を言ってられなくなるかもしれない。しかし、想定見立て量に対する代金が年間
10万円の薪を買うだなんて大赤字。

 家づくりの検討はどこへ行ったか、こうなれば講習を受けなければならん。と探していたある日、会長から「こんなのあるよ」と教えてもらった「林業研修会」。森林組合的な団体が実施する、林野庁助成事業だ。
 内容はチェンソー体験だけのお手盛りっぽい実践的ではないものではない。ガッツリとチェンソーは使う上に、架線を張って搬出だとか林業重機を使うだとか、素人相手の割には大変実務的っぽい。自己伐倒を掲げるお父さんからすると、垂涎の内容。かつ、税金を使って無料で教えてもらえる、選択の余地なし。夜が明けて早速電話。